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2005/02/13

企業経営概念の地域経営への援用の問題

a 「地域において、企業経営のようなトップマネジメント層を想定するのは無理があるのではないか。」という指摘について考えてみたい。
 企業経営論などの経営論は、成果を効果的に出すための活動体系について論じており、その中からより効果的で実践的な理論が普及していっている。企業経営における理論や概念は、組織や構成員等の状況に応じ効果的に成果を生み出す体系や方法についての考え方である。それはまた、組織論に通じるものである。組織運営のメカニズムなどを研究し、組織の特性に対応して組織の目的を達成するための効果的な組織運営のあり方や理論・方法等を研究するものである。
 このような企業経営に関する概念や方法をそのまま機械的に当てはめることはできない。組織や場の特性、当該組織や場における経営の実態などに対応した仕組みを考える必要がある。地域における現状、また地域における課題、問題点を把握したうえで、仕組み革新をして、地域の内発的な活動により維持可能な地域社会を形成するという目的を達成していくこと。そのための方法を、企業経営論や組織論における有効と考えられる仕組みを、地域の現状に応じて応用していくことが、地域の運営においても必要であると考えられる。
 企業経営と地域経営は概念も対象も異なる。しかし、地域においても地域の総合的な発展を考えていくとき地域を経営するという発想や活動が必要なのではないだろうか。地域の実態に対応した、ガバナンス(運営)のための体制が必要であり、ガバナンス主体によるマネジメントが必要なのではないだろうか。
 地域においては、地域形成主体が自立的に活動をしている。地域においては、バラバラに各地域形成主体により財、サービスの提供が行われている。地域の統一的な目標に向かって各地域形成主体が連携をとりながら活動を行うということが無い。また、地域経営の主体を果たしている組織等は見当たらないといわざるを得ない。
 地域経営を考えるとき、その主体としては当然に地方自治体が考えられる。しかし、地域においては、地方自治体は地域形成主体の一つとして活動し、行政サービスの提供を行っている。地方自治体の運営においては、地域の生活者等の満足の向上のために地方自治体の収入を如何に効果的に支出するかということで運営がされている。これは、構成員の満足のために効果的な支出・事業運営をするという、組織一般の運営論理である。その中で、地方自治体は行政サービス提供機能を果たしているのである。
 地域を経営していこうという意図を持っている地方自治体もあると考えられるが、明確に地域を経営するという活動として現れているものはみあたらないといえる。地域経営の課題は、地域において、実態的には、経営が行われおらず、経営主体もないと考えられるのである。地域を経営するという活動や発想がほとんど見当たらないといえるのではないだろうか。
 地域を経営するとは、地域内の各形成主体を巻き込んで、地域に対するビジョンを持ち情熱を持って、地域のトータルの目標に向かって、地域の経営資源・活動を統合し、調整・マネジメントとしていくことである。そのための地域経営主体としてトップマネジメント層を想定しその経営力・指導力・連携調整力が地域経営活動には期待されるところである。このような地域経営を進めていくことがこれからの地域には求められるのではないだろうか。

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