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2006/04/23

道州制と地域経営


1 地域経営における規模
 地域経営―地域運営においては、経営に適した規模が望まれる。組織管理においてはスパン・オブ・コントロールといわれる適切な管理範囲が重視される。地域経営においても適切な、効果的な、経営の基本的な規模・範囲―スパン・オブ・マネジメントが考えられるのではないか。
 地域における社会システムの区域は10万人程度前後の人口規模であり、経済システムの区域は50万人前後の人口規模ではないかと考えられ、地域経営の規模としては、10万人程度から50万人程度ではないかと考えられる。(参照:海野進『これからの地域経営』(同友館、2004年)p.29-32)
 現在の都道府県の規模は、少ないほうからいくと、鳥取県569千人、福井県744千人、山梨県762千人、島根県774千人、高知県787千人である(2004年)。このような県においては、人口規模だけからいくと、2-3の経営単位になるのではないだろうか。
 
2 地域経営における階層性と道州制
 地域開発においては、現在、市町村単位、都道府県単位、国の地方支分部局単位、国単位に行われている。つまり、地域における行政課題の解決のために、市町村、都道府県、省庁の地方支分部局、省庁、によってそれぞれ地域特性に応じたものから全国的な視野に立った行政まで、それぞれにおいて進められてきた。
 今回の「道州制のあり方に関する答申」(地方制度調査会、2006年2月28日)においては、「財政的制約の増大等から、これまでのように都道府県を単位とした行政投資によって公共投資等を整備し、維持更新していくことは難しくなっていくものと見込まれる。」としている。つまりは、国の財政状況から、都道府県単位の整備には国は支援していくのは難しいと宣言しているといえる。また、道州の担う事務としては、「圏域を単位とする主要な社会資本形成の計画及び実施」が最初にあげられている。従来国や国の地方支分部局が行ってきたものを道州に移管しようという意図がうかがえる。
 答申においては、都道府県をやめて道州制にする必要については、「広域的な対応が求められることとなるものは一層増加するものと思われる。」という表現でかたづけられている。また、答申において、道州が、主要な政治行政主体として役割が果たせるよう制度を見直し、自立的に対応できるようになれば、自立的で活力ある圏域の実現が期待できるとある。広域的な対応を求められることと都道府県がどのような点で機能不全に陥っているのか。またその機能不全は道州制によってのみ改善されるのかという点について、十分には説明されていない。また、都道府県を、主要な政治行政主体として、その役割を果たせるように仕組みを変えることで対応可能ではないかが十分検討されたのだろうか。

3 地方分権と道州制
 道州制をすることが地方分権につながるという考え方がある。それは、中央官庁の権限を道州に移管するということによってのみ、地方分権を実現できるという考えである。しかし、地方に権限と財源を委譲し、地方において自主的自立的な地域経営ができる仕組み、単位が必要である。このてんについて、十分な検討が行われる必要がある。
 アメリカの州と日本の都道府県を人口別に並べ替えしてみると、人口が少ないほうから10を見ると、アメリカの州が5、日本の県が5である。アメリカでは、確かに大きい州は多いが、小さい州もあり、それぞれ歴史と地理的な状況から州になったのではないかと推測される。ただ単に、道州制を導入して、大きな区域にすれば良いというものではない。
 道州制の導入に当たっては、適切な税源委譲を行うことに加え分権型社会に対応しうる地方税体系の実現が記載されている。これが実現されるかどうかが問題である。現在までの国の動きを見ていると、形式は整えるものの実際的な、地方にとって適切な税源委譲や税体系が実現される可能性は大変低いことが十分懸念される。ただ、国の地方への機能転嫁だけに終わるだけではないだろうか。

4 地域経営に向けて
 地域経営とは、地域の自主的、自律的な発展のためのネットワーク運動である。
 地域の広がり大きくなると、地域の運営感、一体感が無くなり、地域の主体的な運営という観点では、道州制には無理がある。今回の答申においては、地域経営という観点が十分ではないと考えられる。単に国土開発にかかる機能分担について、国の地方支分部局が行ってきたものを道州に任せようということではないか。ローカル・ガバナンスによる地域における自主的な動きやローカル・マネジメントという地域単位の自主的な維持可能な発展のための自律的な運動という考え方とは観点が異なるのではないものである。
 現在の地域における社会システム、経済システムにふさわしい、歴史的、地理的な条件に応じた、地域のマネジメントの規模があるのではないだろうか。
 いかに地域経営が自主的、自律的に行われるかという観点に立って、地域経営の仕組みが構築され、運営されなければならない。そのような仕組みの革新が行われることが日本の内発的な発展に必要なのではないだろうか。


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