地域経営のポイント
夕張市の破綻に関しては、地域経営という観点からいろいろ考えることができる。
1 マネジメントの問題
まず第一は、市長のマネジメント力の問題である。
マネジメント上からは、売上見込み、決算見込みにおいて経営計画のミスや経営計画の修正を行わなかった問題、経営者のリーダーシップとチェック機能の問題、つまり、ステークホルダーである議会、市民が容認しており、馴れ合いになっていたという、チェック機能が果たされていないという問題、引き返しポイント見直しポイントなど判断ポイントで判断していないという問題、などのマネジメントにおける基本的な問題が指摘できる。
また、カスタマー・マーケティングという短期的視点を重視し、サポータ・マーケティング(パブリック・マーケティング)という長期的視点がおろそかになった。地域活性化のため放浪の芸術家の珍重や職員野球に力を入れ、ステークホルダーとの関係性や公的組織としての行政運営を軽視した。
2 構造的な問題
夕張市の破産問題については構造的な問題もある。それは、地方が様々な自助努力をしても改善されないという構造的な地方貧困化構造であるということである。自助努力をしても、社会経済状況の中で、一定の限界があり、それ以上の夢を追いかけると、自転車操業的な経営活動をせざるをえないということである。それぞれの立地状況、当該地域の全体的な社会経済的な構造における位置づけなどを考慮したうえで、様々な努力をしていく必要がある。身の丈にあった経営活動の実践である。
3 地域経営上の問題
地域経営においては、ローカル・ガバナンスを発展させ、地域社会の協働運営を超えて、地域における政治システムの活動主体、経済システムの活動主体、社会システムの活動主体による、協働の、地域発展のための運動、地域をマネジメントしていく運動とそれを推進する体制が必要なのである。(海野進[2005]「地域を「経営」する ーローカル・マネジメントー」(『構想』volume 4、日本構想学会、2005年)p.1-3)。地域経営は、ローカル・ガバナンスの時代において地域経営主体の協働による地域の発展を求める運動であり実践であると考える。
つまり、地域経営においては、多様な地域経営主体による活動の集積や総合と、地域の発展を求める地域経営主体による協働活動、さらには、各地域経営主体の活動をマネジメントしていく活動(連携調整活動)が、ポイントである。
具体的には、Σ(地域経営主体の数×地域経営主体の活動量)、Σ(地域主体の数×地域経営活動の活動量)、統合的地域経営主体の連携調整活動状況、などの状況が地域経営においては重要となってくる。
このような地域経営という観点からみると、夕張市においては、多様な地域経営主体による活動の集積や総合と言う点では、夕張市という地方自治体とその関連会社しかいなかったのではないか。そのため、多様な地域経営主体による協働活動も一部に限られ、連携調整活動についても地方自治体及びその関連会社の主導になってしまったのではないかということである。
地域においては、個人、NPO,コミュニティビジネスなどの多様な地域経営主体が様々な活動することが必要であり、多様な地域経営主体の活動を支援していくとともに、これらの地域経営活動を連携調整するための協働活動を、真に協働で進めていくための会議を設けるなどして、地域経営運動として進めていくことが必要である。
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