« 地方創生について考える <仕組み・構造を考える> | トップページ | 一過性のイベントを地域経営に活かす-イベントで人がたくさん来ればそれでいいのでしょうか »

2015/01/28

地域の雇用者報酬の視点からの地域格差の是正を

 地域格差を考える場合には、(県民経済計算における)都道府県別の県民一人当たり県民所得を見ることが多い。この県民所得は、雇用者報酬、財産所得、企業所得を合計したものである。そのため、県民所得だけではなく、実際生活している人の収入=雇用者報酬を見てみることが重要と考えられる。また、都道府県の雇用者報酬は、雇用者数と雇用者一人当たり雇用者報酬の積と考えることができることから、県民一人当たり雇用者報酬の格差は、都道府県の雇用者数に格差があるか、当該地域における雇用者一人当たり雇用者報酬に格差があるためと考えられるところである。
 地域間格差について上位5県と下位5県による格差という点でみると、2011年の県民一人当たり県民所得における格差1.528倍、県民一人当たり雇用者報酬の格差1.603倍となっており、あまり大きな格差ではないように感じる。
 しかし、散布図を見て分かる通り、東京都が別格の存在であり、他の都道府県との連続性から隔絶しているような状態である。

 2011

 つまり、県民一人当たり県民所得においては、東京都は、最少県との格差は2.167倍や全国平均からの格差1.500倍となっている。これは、県民一人当たり雇用者報酬における、東京都の最少県との格差1.971倍や全国平均からの格差1.367倍より高い数値であり、格差が大きいといえる。
 基本的には、生活者が働くことから得られる雇用者報酬において大きな格差がないことが理想であり、望まれるところであるが、実際上は格差がみられる。それ以上に県民所得において格差が大きいというのが現状である。雇用者報酬より、それ以上に企業所得、財産所得が東京都において集中しているということである。
その意味においては、東京都に対するのと異なる、地域に根差した新たな対応、仕組みの創設等を検討することが必要である。

 また、県民一人当たり県民所得のうちどれだけが県民一人当たり雇用者報酬に渡っているかということは、つまり労働分配率となる。この労働分配率を見ると、日本全体では2001年69.8%であったものが、2011年は、66.5%と下がっている。
 これを都道府県別にみると、ほとんどの県は労働分配率が下がっている。上昇しているのは、福島県、東京都、愛知県、兵庫県、高知県となっている。三大都市圏の都県で上がっている。ここでも、地方の低下と東京都などの都市圏における富の集積等が窺える。
 地域活性化においては、まず県民所得総額が増加するよりも地域で生活する雇用者の報酬が増えていくことが基本と考えられる。本来的には、地域・地方の雇用者報酬が増加し、地域の中でキャシュフローとして循環していくことが望まれるところであるが、現実は労働分配率が全国的に下がり、地方において特に激しい状況である。

 地方創生、地域活性化、地域の経営においては、県民所得や県内総生産の増加ではなく、内発的発展によって雇用者数の増加、雇用者報酬の増加を図ることに重点的に取り組むことが肝要と考えられる。そのためには、地域企業に頑張ってもらうことが基本である。地域としては、地域企業の経営力向上や海外等へのマーケティング活動への支援、ニッチ・トップ企業としての発展を図るための技術力・開発力の育成支援、創業ベンチャーのマネジメント力・マーケティング力の向上支援、地域企業活動における域内循環の推進などに重点的に取り組んでいくこと、これらの活動を地域全体としての経営指針としてまとめ、戦略的に実行し、これらをマネジメントしていくことによって、成果があがるように地域を経営していくことが重要である。

|

« 地方創生について考える <仕組み・構造を考える> | トップページ | 一過性のイベントを地域経営に活かす-イベントで人がたくさん来ればそれでいいのでしょうか »

地域経営」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 地域の雇用者報酬の視点からの地域格差の是正を:

« 地方創生について考える <仕組み・構造を考える> | トップページ | 一過性のイベントを地域経営に活かす-イベントで人がたくさん来ればそれでいいのでしょうか »