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2016/01/30

地域再生に向けて活動する団体が活発でいいですねではなく、地域が自主的に考えてどのように地域課題を解決するための活動をしていくか

1.地域再生大賞が決定
 地域活性化に挑む団体を支援しようと、地方新聞45紙と共同通信社が設けた「第6回地域再生大賞」の各賞に、大賞「かさおか島づくり 海社 (かいしゃ) 」(岡山)、準大賞には「 沼垂 (ぬったり) テラス商店街(テラスオフィス)」(新潟)と「岡崎まちゼミの会」(愛知)に決まった。特設の表彰として「葉っぱビジネス」で知られる功績を評価し「いろどり」(徳島)に、選考委員長賞を贈ることを決定されました。
 かさおか島づくり海社は、介護や買い物支援で島の暮らしを支える。沼垂テラス商店街は衰退した市場を若者が集まる場所に再生。岡崎まちゼミの会は商店主が技術を伝え消費者の関心を集める活動を広げた。いずれも地域づくりのモデルになると評価されたということだそうです。
 ノミネートには多くの活動が出ていました。イベントなど交流や賑わいを目指した活動がみられました。これらの活動は、取り組みやすい面もあり地域の活性化という点では重要であり、必要な活動の一つではありますね。
もう一方は、介護や買い物支援、街の再生、などは、多くの関係者による協働が必要になったり、継続的な活動が必要になり、継続的な実施には関係者の相当なエネルギーとネゴシエーションが必要になってくることが容易に想像できます。交流・にぎわい創出のための活動と比較した場合、の困難性を感じますね。
 また、対象に決定した介護や買い物支援等の活動は、地域の課題解決を図るための、多様な活動を、着実に進めてきた活動であり、まちゼミは商店主によるゼミを開催することにより、地元の商店の良さを定着させていくガーデニング型マーケティングの発想による地道なマーケティングの実践でもあります。
 着実に、地域の課題の解決に向けて、地道な活動が重要であり大事であるということを示唆しているのではないでしょうか。

2.地域の課題への対応
 地域において何が課題であり、そのためにどのような政策が期待されているかについては、内閣府「地方再生に関する特別世論調査」(2009年)によると、「地域が元気になるために特に期待する政策」は、多いものからみると、「多様な世代が共に暮らせるための福祉、医療の充実」59.2%、「安心して住み続けるための防犯、防災対策の充実」49.0%、「商店街の活性化対策や、まちなかの居住環境の向上などの中心市街地の活性化」44.5%などとなっています。これらの、福祉・医療の充実、防犯・防災対策の充実、中心市街地の活性化が、地域生活の上で十分になされていない、地域における課題であるといえます。
 今回の受賞の活動は、介護や買い物支援、街の再生、などであり、世論調査にあるように、期待されている政策に関連する活動です。地域課題への対応といえることが評価の一因ではないでしょうか。

3.地域課題への対応主体
 介護、買い物支援、街の再生などにかかわる活動ということですが、よく考えてみると、本来行政セクターですべきことではないかということです。パブリック・ガバナンスの問題ではないかということです。行政セクターが弱体化しており、多様なニーズに対応できないということでしょうか。行政任せで課題を放置しておくよりは地域自らが課題解決に乗り出すのがよいということでしょうか。それとも乗り出さざるを得ない状況であるということでしょうか。
 「地方再生に関する特別世論調査」(2009年)によると、「中心となって活動すべき人々、団体」は、多いものからみると、「住民一人ひとり」62.2%、「地方公共団体」53.7%、「商店街」33.6%、「民間企業」32.5%、「自治会や、講、もやいなどの地縁的な団体」32.4%、「国」30.1%などとなっています。このように、「地方公共団体」「国」が中心となって活動すべきという割合が高くなっています。(両方を合計すると 83.8%にもなります。)
 行政セクターと民間セクターの問題であり、行政がもっとすべきであるという議論、要望もあります。また、国の視点からの政策は国のことを考えているだけであり、個別の地域を重視していないので、国任せにするのではなく、地域の視点からの政策の在り方を考え、推進していくことが大事であるという意見もあります。
 また、パブリック・ガバナンスにおける行政セクター(国・地方自治体)の機能不全や失敗に伴って、行政セクターが地域の課題に対して十分機能していない、または、無力・無策であるということから、ソーシャル・ガバナンスにおいて、コミュニティやNPOなどが対応せざるを得ないということでもあると考えられます。
 ともかく、公的セクター、民間セクター、市場セクター、中間的セクターの役割分担、あるべき姿の問題である。これについては、常に議論をしてコンセンサスを得ていくべき問題である。つまり、政治システム、経済システム、社会システムという3つのサブシステムに対応した、パブリック・ガバナンス、マーケット・ガバナンス、ソーシャル・ガバナンスにおいて、どのシステム、どのガバナンスで対応すべき事柄かどうかということです。

4.各地域経営主体の機能分担
 各ガナンスの機能分担という問題はまた、各地域経営主体の機能分担の問題でもあります。地域の内発的な発展のためにはどうか、という視点が重要です。
 ただ、多様な地域経営主体が活動するのが良い、ただ民間が頑張っているから良いという問題ではないのではないか。本来的には、このセクター、ガバナンスの対応(この地域経営主体での対応)が必要ですが、これこれの状況を踏まえると当地域においては、このガナンスとこのガバナンスがそれぞれの地域経営主体が活動において連携を取っていくというコンセンサスが大事であり、そのうえで実行活動をしていくなかで、PDCAを回すなどしながら、相互に連携し、緩やかな調整を図っていくことが大事です。
 
5.継続的な活動のための仕組み
 三つのガバナンスがそれぞれにどのように機能分担していくかという課題のほかに、もう一つ考えるべきは、地域のための活動の継続性の問題、地域におけるキャッシュフローの問題です。つまり、「地域の経営学」の実践という視点です。キャッシュフローに繋がる活動や仕組み・仕掛けがあるかどうか、また。より効果的にキャッシュフローが増加し地域内で連関していくかという問題です。つまり、売上とか利用料とか手数料が発生することが、ない場合より継続に繋がると考えられます。
 効果的にキャッシュフローが生まれる活動という視点での取り組みかどうかが地域の発展に繋がることが考えられます。ボランティア活動だけで、推進しようとすると限界、息切れが生じることが十分予想されます。そのために地域の活動のなかにキャッシュフローが生まれる仕組みを入れることに取り組みたいです。そして、それが効果的に行われるためには、地域経営主体において、マーケティング、マネジメントなどの実践が効果的に行われることです。


 以上をふまえると、地域の真の発展のためには、どのガバナンスが機能を発揮し、他のガナンスの地域経営主体と連携を進めていくのが良いのかを、地域が自立的に議論し、考えて、進めるとともに、ガバナンスの在り方、機能について、コンセンサスを得ることが大事です。そのうえで、キャッシュフローを効果的に生み出すべく、地域経営主体において経営学の実践がどれだけ行われているかを分析して、その分析・検討結果、成果と課題を他の地域の活動、地域経営主体の活動に活かしていくことこそが、地域の真の発展に繋がっていくと考えられます。

※参考文献:海野進『みんなで進める「地域の経営学」実践講座』(同友館)
「いろどり」や「まちゼミ」について、その意義や「地域の経営学」実践などについて記述しています。いろどりについては第21講など、まちゼミについては第16講・第21講などにおいて。また、ガーデニング型マーケティングなどマーケティングの実践については、第11講から第17講において詳述しています。

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