経営改善に向けた実践ステップ -売上低下等への対策の実施-
売上が減少し、利益も減少する。これは、中小企業によく起こる事態です。
これに対して、どのように改善に取り組むかです。
取り組みとしては、①売上等減少の要因の分析・検討、②要因の特定(推測)、③経営改善ための対策・戦略アクションの策定、④数字的な裏付けのある対策・戦略アクションの実行、という手順で進めることが効果的と考えられます。
<その1> 売上等の減少の要因を探る
まず、売上減少・利益減少の要因を探ることが必要です。売上等減少の要因の分析・検討の実施です。そのため、
・事業実績の分析
・SWOT分析
を行いましょう。
「事業実績の分析」は必須です。事業実績データが蓄積されていればその内容の分析・検討です。無ければ既存資料の中からデータとして使えるものをエクセルなどによって、集計し分析します。
事業実績については、商品(部門)別、得意先別などの売上実績、利益実績の年計推移グラフをみてみましょう(年計グラフは、月次単位で、過去1年間の売り上げを集計して、その推移をグラフしたもの)。これによって、どの商品の売上が減少しているのか、それは何故かを考えてみます。また、得意先別や地域別にみて、商品以外の売上等減少の主要な要因(得意先別の商品構成の変化など)を探ります。必要に応じて、簡単な相関分析なども行いたいものです(エクセルで簡単にできます)。
次に「SWOT分析」によって、売上減少、利益減少の要因を考えます。SWOT分析は、
・経営の内部にかかるS(強み)W(弱み)
・外部(経営)環境にかかるO(機会)T(脅威)
を分析するものです。SWOT分析はTOWSの順に分析することが有効です(外部環境から分析)。
具体的には、まず、当社のビジネスにかかる機会、脅威の状況の把握です。当社のビジネスにかかる市場と競合がどのように変化して売上減少、利益減少をもたらしているのか…要因を把握します。
また、ビジネスとしての強み、弱みを当社の内部(経営資源等)から分析・把握し、それが売上の減少、利益の減少とどのように結びついているのかを把握します。
このように、外部および内部の視点から、売上等の減少要因を把握します。
<その2> 売上等の減少の要因を特定(推測)
事業実績の分析及びSWOT分析に基づいて考えられる要因について、検討・分析して売上等減少要因を特定します。売上等の減少の主要な要因の特定(推測であり仮説)です。
そして、主要な要因が特定されれば、その要因別の売上等減少への影響の度合いを推測しましょう。例えば、「A要因による売上減が6-7割を占めている」、「B要因による売上等の現象が1-2割程度である」などの推測(推定)をします。
これは問題意識の明確化になり、影響の程度を推測すれば、改善による効果も考えることに繋がります。
<その3> 経営改善のための対策・戦略アクションを策定
これらの分析結果を踏まえて、売上減少の主な要因ごとに、経営改善のための対策・戦略アクションを検討し決定します。例えば、商品の価値の再構築(ポジショニングの再確認とブランディングなど)、販売・営業にかかる体制・仕組みの見直し、顧客への訴求力の向上(POP,チラシ、広告など)などが考えられます。
この経営改善のための対策・戦略アクションは、
・顧客の視点
・プロセスの視点
・人材の視点
・革新・開発の視点
の各視点でのアクション(取り組み)を策定します。
これらについては、具体的な計画内容が求められます。金融機関においても、ただ頑張りますでは納得してもらえません。具体的に何にどのように取り組むかを説明しないと納得してもらえません。そしてそれはデータで示す必要があります。具体的な対策内容と効果、これらに関する数字的な説明が重要になります。
「売上拡大の事業を進める」という決意表明に過ぎないものではなく、「○○地区重点販促 ○○千円の増加、○×商品の開発・販売 ○×千円の増加、2名体制で営業をする」などです。
<その4> データに基づく実効性が高い数字的な裏付けのある対策・戦略
以上の売上等の減少対策・戦略アクションが企業にとって効果的なものでないといけません。
そのためには、「数字的な具体性のある対策・戦略アクションであること」、「売上重視ではなく利益重視の対策・戦略であること」、「全体のビジョンに基づいた全体及び個別の対策・戦略であること」がポイントになります。
つまり、その対策・戦略アクションにおいて、具体的な行動計画であり具体的な数字的な売上・利益計画であることです。データで示すことです。事業実績データを基にした商品(部門)別売上計画、利益計画などです。事業実績のデータ分析結果を反映させた経営改善計画とします。
また、売上高重視ではなく利益を重視した対策・戦略アクションであることです。顧客価値戦略、付加価値の向上戦略の実行です。
さらに、全体のビジョンがありそのビジョンに基づく個別の対策・戦略アクションが明確になっていることが、大変重要です。全体的な経営方針・戦略があり、その中での位置づけが明示されておれば、全社的に意欲的にアクションが実行されます。それが成果、KPI(key performance indicator、主要業績評価指標)の達成に繋がっていきます。
以上のように、利益の確保・増額を目指した、データの根拠のある実効性ある経営改善・経営革新を進めていくことが、中小企業の発展につながります。
海野進中小企業診断士事務所
(参考文献)
海野進(2017)『経営課題の解決に向けたフレームワーク活用-地域中小企業、非営利的組織の持続的発展のヒント』三恵社
牧田幸裕(2009)『フレームワークを使いこなすための50問』東洋経済新報社
嶋田利広他(2011)『SWOT分析による経営改善計画書作成マニュアル』マネジメント社
#海野進中小企業診断士事務所