学会論文の中で私の地域経営論
1970年代以降の「まちづくり」は3つの世代に分けることができると指摘されている。
(竹内 裕二(2017)「まちづくりの系譜から“次のまちづくり”を考察する」(筑波学院大学紀要 第12集))
第1世代は「理念」、第2世代は「実験とテーマ」、第3世代は「地域運営」である。
第3世代は「地域運営」においては、ガバメントによる地域運営ということではなく、ガバナンス=「地域運営」そのものに着目して、いかに効果的な機能的ながナンスがなされるべきかという言うことに関して、いくつかの概念が登場することとなる。
その一つとして、経済・経営学研究で登場するのが「地域経営」(海野進)である。
経済・経営学研究においては、第1世代の「地域主義」(玉野井芳郎)、第2世代の「内発的発展論」(宮本憲一)に次ぐ概念であるとされる。
ともかく、「まちづくり」に関する経済・経営学研究に関する主な概念の一つとして、「地域経営」があり、地域運営を経済・経営学的に見ていく際には、「地域経営」という視点が大変重要であるということであろう。
参考文献
海野進(2011)「地域経営の診断視点に関する一考察」、日本経営診断学会論集11
海野進(2014)『人口減少時代の地域経営 : みんなで進める「地域の経営学」実践講座』同友館
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私が地域経営として追及してきた地域経営学ですが、
この度、
地域経営学にかかる論文が、福知山公立大学研究紀要 別冊(2018)にまとめられ発表されました。
掲載されている論文としては、次のような内容です。
第1章 「地域経営学」の社会的・学術的背景と到達点
第2章 わが国における地域経営論の萌芽 -公共経営論の深化と地方分権改革-
第3章 地域経営学のフレームワーク -経営学からの展開-
第4章 医療福祉経営学科からみた地域経営学
第5章 持続可能な社会における公益の構造 協働型社会政策の一視点
終章 地域経営学の役割と意義
地域経営について、考える場合、実践する場合、大変参考になりますね。
このなかの 第1章 「地域経営学」の社会的・学術的背景と到達点
において、
「「地域経営学」のひとつの到達点として評価できるのが、海野進『人口減少時代の地域経営』(2014 年)であろう。」
と評価いただきました。(p.37,38)
また、その論文の中で「経営機能の視点からの4 点の指摘は注目される」とも指摘いただきました。
今後とも、地域の多様な主体の連携、協働によって、地域が持続的に発展していってほしいです。
そのために、地域の各主体が活動すること、適切に協働することです。
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そのためのステップとしては、
1.経営目標を立てる
2.「まち」の活動を進める
3.お客さんにまた来たいと思ってもらう
4.地域における多様な主体が活動する
5.成果を把握して今後に生かす
これらを、着実に、多様な主体で、活動することです。
最初のステップである、「経営目標を立てる」ですが、
地域において、様々な活動が行われています。
どのように効果的に進めるかがポイントになります。
そのためには、まず、
・「まち」の経営目標を明確にする。
・「まち」の経営戦略、事業計画を立てる。
そのうえで、
・「まち」の戦略的活動を進める
が必要です。
市町村など行政においては、経営目標や経営計画は総合計画などとして決めていますが、どうしても総花的になり、戦略的ではなくなってきます。バランス重視のためです。
身近な地に足の着いた最小単位である「まち」としは、総花的な目標は不要です。着実に実行するための経営目標を設定して取り組むことが大事。
ただ漫然と、前例踏襲的に地域組織がその事業をしているだけでは、発展がないのではないか。
「中小企業では、経営計画を社内公開している企業のほうが、経営業績が良い」ということが指摘されています。
これは、組織活動の目標が明確になり、活動水準が上がり、構成員全体においてやる気の上昇につながった結果と推測されます。
つまり、組織内に計画や経営目標など活動の目標となるものが示すと、組織としての活動の成果が高まるということである。
これを「まち」を作るときに応用しない手はない。
ということで、3-5年後の経営目標をみんなで決めて、みなんなで実現に向けて活動しましょう。
年間トータルのイベント集客人数を○○万人達成、商店街の新規出店〇店舗実現、など成果指標を設定します。
そして、経営目標実現に向けたステップ、戦略などを決めて、そのための活動を進めましょう。
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職業能力開発促進法に基づく職業能力開発校で、マネジメント、マーケティング、人的資源管理、財務管理など経営全般に関する科目 を担当し、45分授業相当32回分(90分授業16回分)の講義をしています。
再就職を望む離職者や転職者を対象に専門知識・技術について短期集中指導を行うコース(プログラム)においてです。
地域で働くことを目指している人たちに、経営全般に関する知識を習得してもらうというものです。
地域において、経営全般に関する知識を持った人が企業等で働くことは大変いいことですね。これによって、地域の中小企業等の経営が改善されればよいのですが、そんなに簡単ではないでしょうね。
地域経営においても、地域運営、地域活性化において経営的感覚で経営理論の応用・活用などを行っていくことがより効果的であるということでしょうが、実際上の効果はどうなのでしょうか。地域経営の推進を訴えてきておりますが、、、、。
地域発展に向けて、経営的発想・感覚による地域運営・地域発展を目指す活動、地域経営活動をどう進めるか、どのようにしていけばより効果的なのか、については、『人口減少時代の地域経営-みんなで進める「地域の経営学」実践講座』(同友館、2014年3月)において書き込んでみました。
今後とも、地域の経営機能の向上のために、地域の発展のために、何がより効果的なのかなどについて、さらに考えてみたい。
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-個別企業経営と地域経営の連携-
<個別企業経営における地域経営との連携の重要性>
地域活性化などを目指す地域経営においては、地域全体として発展を目指す経営を進めるとともに、個別企業が個別企業として発展すること、さらに個別企業における「地域の経営活動」(地域全体の発展にかかる活動、地域の発展を目指す活動)が大事であり、地域経営における課題として指摘したところです(図表参照)。(海野進『地域を経営する-ガバメント、ガバナンスからマネジメントへ』(同友館、2009年4月)pp.72-78)
つまり、地域における個別企業が地域の発展につながる活動を行うこと、機能を果たしていくことが重要であり、これらの活動が有効であれば、地域の活性化(地域経営の発展)につながるといえます。
<地域経営HUB機能>
HUB機能は、当該施設を拠点として放射状に他施設等に移動・展開していくという機能を果たしていく仕掛けです。これを地域経営においては、地域の放射状移動・展開機能を持つのは公共的な観光施設でしょう。通常の公共観光施設では地域内の他の観光名所等を紹介することによって、この地域経営HUB機能(地域活性化HUB機能)を果たすようにしています。
<能作のHUB機能への挑戦>
富山県高岡の伝統工芸である銅器の鋳物メーカーで、伝統工芸で培われた技術を活かし、曲がる錫製のKAGOなどデザイン性の優れたテーブルエアなどヒット商品を生み出している(株)能作(富山県高岡市フィスパーク8-1)が2017年4月末に新社屋を完成させました。ここにおいては、このHUB機能を果たすというコンセプトのもとに産業観光の機能を持った施設です。
具体的には、新社屋(施設)においては、
・プロジェクションマッピングによる富山の見どころ紹介
・社員おすすめの食や祭り名所を紹介するカードの掲示
・「100のそろり」の展示
がHUB機能を果たしているといえます。
まず、プロジェクションマッピングによる富山の見どころ紹介は、エントランスにおいて視覚に訴えるかたちで県内の観光情報や見どころを映し出しています。これにより、他の観光施設に行きたいという気持ちになります。(施設内に他の観光地を紹介するというのは、公共的な観光施設として行われているHUB機能です。それを民間企業で行うというのはあまり多くはないのではないでしょうか。)
また、プロジェクションマッピングが映し出している場所で、社員おすすめの食や祭り名所を紹介するカードが置いてあり、気になる人はそれを持ち帰り、それを元にそのカードの場所に移動することを誘引しています。
特筆すべきは「100のそろり」の展示です。「100のそろり」は入口に展示されています。「そろり」は古来より茶席で使われている一輪挿しのことですが、伝統工芸のまち「高岡」の職人100人が、能作の「そろり」をベースに、それぞれの技術をもって自由にデザイン・製作しました。能作が、創業100周年を迎え、「100のそろり」の製作を企画したものです。高岡の職人それぞれが持つ伝統に培われた技術を基に個性豊かな作品が展示されています。この「そろり」の作品を見て、気に入った職人のいる工房を訪ねたり、その職人の作品を置いてある店を訪れたりすることが期待されます。
このように、産業観光施設でもある能作の新社屋は、県内の観光や伝統工芸に関して移動トリップの中継機能、中継の仕掛けを持っている、つまり地域経営的なHUB機能を持った施設です。
この能作の地域経営HUB機能への挑戦が、実績として成果につながっていくことを期待したいと思います。
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拙著(海野進『地域を経営する-ガバナンス、ガバメントからマネジメントへ』同友館)が、一橋ビジネスレビューの論文に引用されています。
具体的には、
林大樹(一橋大学大学院社会学研究科教授)「地域創造マネジメントと大学教育」(一橋大学イノベーション研究センター『一橋ビジネスレビュー 2013 Autumn(61巻2号)』)において引用されています。
拙著を参考にして、地域のマネジメントに関する議論の概念整理をされています。
引用については、アマゾン等で購入するか図書館で貸し出しを受ければ、確認できます。
一橋大学イノベーション研究センター『一橋ビジネスレビュー 2013 Autumn(61巻2号)』
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出生率の向上のためには、労働時間短縮や大学学費軽減などが効果的であるということについて、地域経営的に考えてみましょう。
地域においては、地域における子どもを増やすために、出産祝い金の支給、婚活イベントの実施や仲人など結婚サポート活動の実施、保育所の無料化、子どもの医療費の無料化などが実施されています。
直接的な効果を狙った政策の実施です。費用対効果などは十分考えられているのでしょうか。アピール効果はあるともいますが。
目の前の対症療法的な対策をとってもあまり効果が期待できないということではないでしょうか。
出生率の低下の原因である、長時間労働を少なくする、子供にかかる教育費用の低減を図る、ことなどによって、ゆとりを持って、安心して子供を生み育てやすい生活体系をつくるということが、結果的に出生率の向上に役立つということではないでしょうか。
地域経営においては、地域の多様な経営主体が、それぞれに活動していくこと、またそれらが緩やかにマネジメントされて、発展につながっていくことが大事です。そのため、目先の利益を提供するのではなく、地域に住む人々や教育関係機関などの多様な経営主体がそれぞれに円滑に活動する基盤の強化を支援していくことが重要であるということではないでしょうか。
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これからの地域の発展には「地域経営学」が重要になってきます。その観点から、日本学術会議においては、「経営学委員会 地域経営学の研究・教育のあり方検討分科会」が設置をされ、地域経営学について検討がされているようです。
つまり、地域創生時代の地域価値の創造・向上を目的とする新たな経営学の研究・教育分野としての「地域経営学」の意義・役割・体系、研究領域の明確化と同時に、地域創生にむけての人財育成のための教育課程と教育方法のあり方について提言を行うことにする、というものです。
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/bunya/keiei/index.html
このような地域の発展を目指す学である「地域経営学」においては、地域の知的資産、企業の知的資産、NPOの知的資産などを活かしていくことが大事です。つまり、地域全体、企業、NPO、社会福祉法人、地域スポーツ団体など地域のさまざまな団体、組織などにおいて、その団体・組織等の知的資産・知恵を活かした経営=知的資産経営を進めていくことによって、地域が発展していきます。
また、経営学における様々な知見(マネジメント、マーケティングなど)も有効に活用したいです。
それらについては、いままでもいろいろな機会に(著書、雑誌への寄稿、当ブログでの記事など)、発表したりしてきました。今後も、地域経営学の視点での、地域の内発的な発展のための支援・サポートをしていきたいと思います。
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知的資産とは、「人材、技術、技能、組織力、経営理念、顧客とのネットワークなど、財務諸表には表れてこない目に見えにくい経営資源の総称」です。それは知恵であり、工夫であり、組織としての対応力です。(経済産業省HPなど参照)
この知的資産が、企業の価値を生み出しており、企業の競争力の源泉です。
この知的資産(人的資産、構造資産、関係資産)を洗い出し、それを自覚して、この知的資産を活用して、より以上に発展していこうというのが、知的資産経営です。
例えば、先日、岐阜県で美味しい鰻屋さんに行きました。そこで感じたのは、この鰻屋さんの知的資産です。鰻屋さんの知的資産としては、鰻を美味しく調理する腕、美味しいタレを作る技術、良質な鰻を仕入れるための老舗川魚問屋との長年の取引関係、美味しい鰻屋としての評判(ブランド)、などがあります。
その他、モノづくり企業においても、微細・微小・超精密加工技術を持った企業、商品企画力が高いファブレス企業、などがあげられます。この場合、微細・微小・超精密加工技術や高い商品企画力・優秀なモノづくり企業とのネットワークが、それぞれの企業の知的資産になります。
これからの企業経営においては、自らの知的資産を洗い出し、それをより一層強化するとともに、新たな知的資産の育成・発展にも努めていくことが、さらなる発展に繋がります。
地域活性化や地域の経営・発展においても、地域の知的資産(知恵、工夫、文化、風土などの知的で特長的な資産)を洗い出し、その知的資産を有効活用して、地域の内発的な発展に向けて活動していくことが肝要です。ただ漫然と地域の経営活動をしているだけでは真の発展は望めません。
知的資産経営認定士・中小企業診断士
海野 進
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